建設コンサルタント会社の組織構造は、ライン&スタッフという組織構造をとっているところがほとんどになります。

具体的には、ライン部門は、専門分野別に道路部、河川部といった専門分野別に部が形成されます。社員数が多いコンサルタントの場合は、さらに細分化されていきますが、こうした技術部門別の部課構成+営業部がラインの基本構造になってきます。

スタッフ部門については、経理部、総務部などがあります。そこそこの規模の会社であれば、技術(品質)監理部、研究室などが加わります。

全国展開をしている企業の場合は、支社ごとにライン&スタッフの構造をとるケースが多いようです。また、マイナー部門は、本社のみにあり、その部門が全国をカバーします。

また、社員数が多い会社は事業部制を採用しており、支社を事業部単位として独立した経営単位を形成している場合が多いようです。

また、道路事業部、河川事業部といった分野別で独立した事業部となっている企業もありますが、事業部というのは厳密には、独立した事業の経営単位であり、営業と技術部門をパッケージとして成り立つため、営業部門がない技術部門だけを事業部と呼ぶのは、少し違和感を感じる人も多いでしょう。

一般には、大きい部、あるいは部がいくつか集まると事業部という呼び名にしてしまっているケースが多いようです。このような技術だけの事業部構造は、事業をコントロールする権限を持たない事業部長が、事業の責任を負わされる形になっており、本質的な問題の解決ができない組織構造的な問題が存在しています。

以上、建設コンサルタント会社における組織構造(ライン&スタッフおよび事業部制)に関する概説を述べましたが、建設コンサルタント会社全般に言える問題点としては、業務管理(個別の物件)において部の部長、管理技術者、照査技術者という形で管理責任が分散し、管理責任が曖昧な上に、管理人員と管理コストが膨らんでしまうことです。

さらに、業務が、部門間をまたがり、さらに支社、事業部とまたがると、業務責任、コスト、利益の配分をめぐって最適な行動がとれないケースが生じがちです。

一方、他産業、経営コンサルタント業界や先進的なメーカーの開発部門などを見てみると、組織を完全にフラット化して、プロジェクト型、またはマトリックス型と呼ばれる組織構造が採用されているケースが多いようです。

具体的なイメージを示すと、管理には業務管理(プロジェクト管理)と、一般管理(労務、教育、その他)に分かれています。

そして、業務があると、プロジェクトリーダーを任命し(または公募し)、次にリーダーがチームメンバーを集め、プロジェクトチームを結成し業務を進めます。

この組織構造の良いところは、業務管理と一般管理が明確に区分され、一般管理などの間接的な管理コストおよび人員が最小化すること、業務管理責任がプロジェクトリーダーに集約し明確になること、業務実施において最適なチームを結成できること、など非常に優れた点が多いといえます。

また、多くの場合、業務実施者の裁量範囲が大きく、好きな時間に好きな場所で業務を行なえます。会社には個人の机すらなく、集まるときは、空いている机や部屋に集まって仕事をしたりします。

こうした、プロジェクトベースの組織構造の負の側面として、誰からも声の掛からない社員が出てきてしまうことです。プロジェクトリーダーは、業務を実施するために最適な人員を集めようとするので、能力の低い人は呼ばれません。逆に引く手あまたの売れっ子も出てきます。

こうした、勝ち組、負け組みの明確化され社員間の競争は激しく、結果を出せない人は、年棒が極端に下げられるか辞めるかしかなく、「Up or Out」と呼ばれています。

確かに血も涙もない残酷なシステムに見えますが、個人的な見解では、向かないのに会社に飼い殺しにされて人生を浪費するより、早めに結論が出る点は、当人の人生にとっても良いのではないかと思います。

また、企業経営の側面から見れば、伝統的な年功的ライン組織の会社と、フラット型のプロジェクト型組織を比較すれば、業績面での長期的には優劣は明らかだと思います。

ただ、伝統的、年功序列的ライン組織の会社が、フラット型の組織構造を導入しようとしたら、多分、大揉めしますね(笑)。

ただし、社長のリーダーシップと経営陣の統制が取れることが前提になりますが、段階を踏んで5年くらい時間をかける覚悟があれば、フラット型組織の導入はやれると思います。

勇気ある経営陣の皆さん、チャレンジしてみたらいかがでしょうか(笑)