日本の建設関係者は、欧米では、革新的調達方式(デザインビルドやPPP)が頻繁に行われていて、入札もプロポーザル等が主流だと思っている人も多いと思います。
 建設業界誌の記事でも、「アメリカでは○○方式が行われている」といった感じで書かれることが多く、私も欧米では、新しい調達方式が普及していると思っていました。
 
 しかし、個人的には、かなり怪しいと感じていました。過去に設計施工一括発注業務の設計担当をやったことがあり、あまり機能しなかった経験があるからです。
そのため、国建協の研究員になった時に、この辺の疑問は明らかにしようと思っていました。
 
 過去の調査報告書で、革新的調達方式(デザインビルドやCM、PFI)の事例を調べると、特別な大規模開発等のプロジェクトにおけるものであり、普通の道路や河川事業においてどの程度やっているのか疑問がありました。
 しかし、新しい調達方式が普及率に関する過去の調査結果は存在しませんでした。
 
 そこで、私が実際に海外機関に調査に行った時に、ヒヤリング先で質問してみました。

 結論からいうと、アメリカ、フランス、ドイツの公共工事については、設計施工分離、小工区分割発注、最低価格落札の「伝統的な調達方式」が調達の基本になっており、新しい調達方式の適用は、ごくレアケースです。

 具体的には、まず、アメリカですが、その年に、先進的取り組みをしていると言われたバージニア州では、過去数年で3件程度でした。 全体の調達件数中での比率ではごく僅かなはずです。
 
 カルフォルニア州ではやっていないとのことでした。
 建設業者は、役人を信用していないので、定量評価が入る入札は、反対されるとか、州の法律で禁止されていると言っていたような?記憶があります。

 また、アメリカ政府もイノベイティブ(革新的)契約という呼び方から、オルタナティブ(代替的)契約という呼び方に変わっており、連邦が推奨しているわけではないと州政府の人から聞きました。

 フランス、ドイツも国内の普通(道路や河川等)のインフラ事業は、ほぼ伝統的な設計施工分離の調達方式です
ドルトムント市で、ワールドカップで使用するスタジアムのデザインビルド事例について聞きましたが、業者が選定結果に不服で、訴訟になったそうです。
 英国(のイングランド)は、パートナーリングという、少しぶっ飛んだ調達方式を始めていましたが、これもどこまで普及しているのか不明です。これについては別記事で書きたいと思います。

 結局、デザインビルド等の革新的調達方式の普及度や適用割合というのは、全体の中の僅かな部分です。

 基本的には、革新的調達制度の利点があるのは、インハウスエンジニアのいない発注者、超大規模プロジェクト等であり、大部分を占める普通の国内のインフラ事業(道路や河川)は、伝統的設計施工分離方式の、最低価格落札がほとんどだと思います。

 ※日本においても、設計施工分離方式がほとんどですが、欧米の伝統的なやり方とは、全く違うものです。 この点は注意してください。

 欧米での調達方式の適用率の定量的な調査がないので、明言はできません、誰か、調べてみるとよいかと思います。

「建設コンサルについて考える」新着記事