私が、新卒から11年勤務した建設コンサルタント(今は経営破たんし解散して存在しておりません)は、重厚長大系の大企業の100%子会社でした(実質は)。

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建設コンサルタントは、設計施工分離の原則などから、メーカー、施工業者などとの資本上のつながりは望ましくないのですが、現実には、実質は資本関係的に子会社であるコンサルタントはたくさんあります。
最初に書きますが、大企業の子会社というのは、内部制度など親会社に準じたものになりますので、いわゆる大企業同等の福利条件なホワイト職場で、社風ものんびりしています。割り切って働くにはよいところです。オーナーワンマン企業のようにいきなりクビとかありません。

今回は、大企業、関連子会社の悲哀の部分について書こうと思います。

新卒で入社し、まず衝撃を受けたこととして、親会社出身の人間がとても威張っているということでした。
入社した建設コンサルタントは、親会社の植民地とかカースト制みたいなもので、そこでは、経営幹部層、執行役員(部門長)クラスまで100%が親会社のOBか出向者でした。
子会社に新卒入社し、どれほど優秀で勤め上げても、技術部門副統括クラスにしかなれません。執行役員の下くらいまでであがりです。
また、どれほど業績がよくても親会社の給与体系は絶対に超えることもできません。

親会社からの天下りOBというのは、元工場長とかそんな感じの人が多かったですが、建設コンサルタント業務経験も知識もほぼなく、この業界では素人同然な人が多かったのです。
親会社とは異業種なので素人同然でも仕方がないとは思いますが。

特筆すべきは自己評価の高さで、「俺は世界の○○○の元部長、マネジメントのプロ、レベルの低い建設コンサルタントを指導してやる」くらいに本気で信じていることです。
日本の大企業管理職全般に言えることですが、経済新聞や経済誌を読んで、管理職経験があるだけで、自分をマネジメントの専門家と信じてしまっている人たちが多いです。

態度の端々に、自分は特別なのだという意識が垣間見えます。
普通のサラリーマンおじさんなのに、親会社と子会社の違いというだけで、これほど、威張れるものかと考えていました。

飲み会に行けば、いかに親会社がすごいか自慢、親会社OB同士では、人事のうわさと、自分が会社(親会社)にどれだけ滅私奉公してきたか競い合います。
完全に、頭の中が親会社愛でいっぱいで、自分が今いる子会社や建設コンサルタント業界に興味はありません。

時折、親会社のお友達が、子会社である建設コンサルタント会社にやってきましたが、普通、他社を訪問するときは、受付を通すと思いますが、彼らは、受付は通さず、肩で風を切って、ふんぞり返って入ってきます。
そして、その辺の社員を捕まえて、「○○さんいる~?」とため口で聞きます。決して名乗りませんが、名前を聞かれると「○○○(親会社)の○○だ!」と怒鳴ります。
その会社への入り方、一目みただけで、親会社のお友達が来たなと気づいたものです。

このような、現代のカースト制みたいな子会社特有の悲哀はありますが、重厚長大産業の大企業の社風そのままに、のんびりしていて、どんなに失敗しても責任を取らされることはないですし、能力や成果によって、年収面ではあまり差がつきません。
つまり、建設コンサルタントにはめずらしく、呑気にやるにはよいところではありました。

しかし、プライドだけは一人前の無責任な経営素人集団の会社だったので、建設不況の波には耐えられませんでした。
急激な業績悪化に何一つ、有効な方策が打てず、やれたのは、一律人件費カットくらいです。
いろいろ提案しても、評論家もどきで他人事の態度、リーダシップを発揮できる人は皆無です。

結局、会社がつぶれましたが、経営層で誰一人、責任を取ったわけでもなく、責任を感じてもいないと思います。最後まで他人事です。

重厚長大系の大企業にとって子会社の役職というのは、トップ層まで出世できなかった人へのご褒美みたいな要素が大きいと思います。
そして、二期(4年)くらいお世話になって引退という感じです。

あの当時は、大会社OBの、こんなにおいしい世界があるなんて、子供に良い大学をでて有名企業に入ることを目指させるような親が多い気持ちがわかりました。

まあでも、年功序列の無責任体質では、即断即決でリスクを取ってくる国際企業には勝てないでしょう。日本企業が負けていくのもわかる気がします。

現在の、子会社の建設コンサルタントは、もっと独立性が高い会社が多いと思います。
でも、現代でも、海外との競争がないインフラ系の子会社は、こんな感じの会社も残っているかもしれませんね。

その2に続きます。