ここでは、建設コンサルタント業界の外部環境における競合(+潜在的競合可能性)について考察します。
競合(+潜在的競合可能性)には、大きくは、「既存の競合」、「新規参入者」、「代替品」という三つ視点が考えられます。
三つの視点に沿って考察してみましょう。
①既存の競合
過去10年で市場規模が半減したものの、業者はそれほど減少しておりません。
今後、市場規模に追随する形で業者の淘汰が進みます。
建設コンサルタントは、差別化がしにくい業界です。なぜなら、各社独自の商品を顧客が購入するのではなく、発注側で決められた要求仕様を充たすために、業者が入札する形だからです。
既存の競合の形態は、大きくは提案(実績と人材、品質)と、コストという二つの競争になります。
よって、競争は、二極化が進み、どちらにも中途半端な会社は淘汰されていくでしょう。
②新規参入者
建設コンサルタントは、国内の閉鎖的な市場であり、縮小市場であることから新規参入者は、零細企業に限られます。
大きな業務を受注するには、人材と実績の両面が必要になるため、大規模資本の新規参入はほぼ不可能です。
大規模資本が既存業者を買収しての参入は可能ですが、その場合、新規参入にはあたりません。
また、言語や人材確保、契約制度の壁から海外から国内市場に参入することもないでしょう。
③代替品
代替品とは、同じ機能を別のもので果たしてしまうことです。カセットテープがCDに、CDがmp3に置き換わるようなことです。
革新的な代替品は、既存の業者を一掃する脅威となります。
建設コンサルタントにおける、代替品の脅威について考えてみましょう。
まず、一つ目は、デザインビルドです。
設計施工一括発注が普及すれば、建設コンサルは無くなるか、ゼネコンの下請けになるでしょう。
しかし、デザインビルドが普及することはないでしょう。
デザインビルドが、成功するのは、施工者のノウハウが、設計に反映されることで効果を生むような工事です。
例えば、長大橋、シールドトンネルなどです。
海外においてデザインビルドが普及しているイメージがありますが、アメリカにおいても公共工事の全体のシェアからしてわずかです。
一般工種により構成される公共工事で設計施工一括では、施工者のお手盛り設計になる危険があり、設計施工分離というのは、今でも各国の基本になっています。
日本国内でも同様に、特殊工事以外で、普及することはないでしょう
もう一つは、行政がインハウスエンジニアを直接抱えて、自分で設計することですが、これも、現代の流れからしてありえませんし、非効率でしょう。
以上より、建設コンサルタントは、既存の業者間のみでの競争になります。
これから、淘汰の時代が来ると言っても、競争条件で建設コンサルタントは大変恵まれています。
なぜなら、建設コンサルタント市場は、減少しても無くなることはありません。また、製造業のように、月給1万円の労働力を抱える中国と直接競争させられることもないからです。