これまで、市場・顧客、競合、商品という大枠(3Cと呼ばれるフレームワーク)で建設コンサルタントの経営環境の特徴を整理してきました。

これから、企業の内部的な構造の特徴を整理していきます。

 

まず、建設コンサルタントのコスト構造の特徴から整理していきます。

建設コンサルタント会社の技術者一人当たりの売上は、1,000万円~3,000万円くらいです。1,000万円の売上の会社は、中小のコンサルタント会社に多く、業務規模の小さい業務を中心にしている会社です。国土交通省中心や全国展開しているコンサルタントでは、3,000万円くらいが相場ではないでしょうか。

 

共通していることは、製造業や建設業(ゼネコン)などと違い、一人当たりの売上が小さいことです。ゼネコンでは一人1億円くらいが相場です。

 

なぜなら、建設コンサルタントは、サービス業ですので、材料を仕入れて加工したり、多くの専門業者を使ったりする必要がありません。

技術サービスという機能を提供して報酬をもらっていますので、基本的には、技術者が居て、パソコンやソフトがあれば業務ができます。

よって、コスト構造は、人件費比率が高く、その他の外部流出コストは低くなっており他産業より一人当たりの売上は少なくても経営が成り立ちます。

一人当たりの売上1,000万円強くらいのコンサルタントであれば、外注費はほぼゼロで、すべて社内でやっています。

売上3,000万円くらいのコンサルタントでは、図化、数量部分を中心に、外注費として20~30%くらいが標準で、それ以外は人件費や家賃など内部コストです。

 

次に、建設コンサルタントの人件費のコスト内訳ですが、間接コストが非常に高いことが挙げられます。(具体的な根拠データが上げられないの残念ですが)

大きな会社ほど一般には間接人員が多く、人件費の間接比率は多い所で50%に達しているでしょう。

 

間接人員とは、総務、営業、技術部の中の管理者(部長など)です。業務管理をする人は、通常は直接人員ですが、実質的には間接的な人員も多いのが実態です。

 

建設コンサルタントの間接人件費率が高い要因としては、

 

①年功序列的な組織構造であり、総務、営業、技術部の管理者などは、元技術部の現役を退いた人がなる場合が多く、人件費(単価)が高いうえに、必要以上に人数が多いケースです。

また、建設コンサルタントの技術管理において、部の管理者(課長や部長)、業務の管理技術者、照査技術者(瑕疵管理)がおり、実際、誰が業務の責任を持つのか曖昧になっています。

結局、誰も責任を負わないような仕組みになっている会社も多いのではないでしょうか?

 

②公共調達の趣旨からすると、営業コストは、民間が顧客の産業に比べて低くなるような仕組みであるべきですが、そうなっていないのが現状です。

電子調達は普及してきましたが、未だに人的営業の比率は高いでしょう。

今はさすがに減ってきましたが、車で何キロ走ったとかそういうことが営業の努力の目安であった時代もあります。

 

③行政OBの存在

建設コンサルタント業務の契約は、仕様の範囲があいまいで、なおかつ設計変更、増額の変更の可否も発注者の一存で決まってしまいます。発注者には逆らえません。

行政OBは、受注者側が、発注者側への交渉力強化のための手段であり、業者側から見れば必然的に生じたものといえましょう。

間接コストをアップの一要因といえますが、行政OBで、大変有能で、ネットワークを持ち、会社に貢献している方も多いことも事実です。

 

人件費以外のコスト構造として、中堅以上の建設コンサルタントに特にいえますが、オフィスのコストが高いことがあります。

建設コンサルタントは、他産業に比べてオフィスの場所の制約は少なく、郊外などでもっと環境がよく通勤が楽く家賃の安い場所でも業務はできると思いますが、実際は家賃が高い都心にある場合が多いようです。

 

これは、都心にオフィスがあることをステータスに感じる人が多いからで、優秀な人材を集めたり、対外的なイメージのために必要があったのかもしれません。

 

多くの建設コンサルタント経営者は、コスト削減が限界に来ていると感じているでしょう。

しかし、実際は、品質や社員の満足度(労働環境や給与の改善)を上げ、かつ、コストを削減できるイノベーションの余地は残っていると思います。

 

現在、多くの産業において、多くの間接人員や営業マンを抱えて、都心にオフィスを構える既存のビジネスモデルは、限界に来ています。

名のある大企業が、新興企業に、価格やサービス面で負けているケースが多く見られています。

 

建設コンサルタント業界は、他産業に比べて変化に乏しい世界でありますが、次世代に伸びる建設コンサルタントは、既存のビジネスモデルとは別のところから出てくるでしょう。