以下に外部環境の市場と顧客の特徴を整理していきます。
①顧客の特徴
建設コンサルタントの顧客の特徴として、顧客のほとんどが公的機関であることが第一に挙げられます。
国の機関、地方公共団体、旧公団系会社、国際機関などです。
顧客からの受注は、公募、入札による形となりますので、一般のマーケティング手法は、適用できません。広告、宣伝、またはwebマーケティングなどの効果は薄いでしょう。
受注拡大には、市場のトレンドと各公共機関ごとの調達の仕組みの研究が第一になります。
また、公共機関を顧客としているので、財務的には、業務仕掛りに関して当初契約分の未回収リスクは、かなり少ないです。 (変更部分の費用化、回収はリスクになりますが)
また、納品検査終了後の売掛回収リスクもありません。
大きな在庫を抱えてしまったり、売掛が回収できないことが多い製造業など、他の産業と比べるとかなり恵まれているでしょう。
②縮小市場
建設コンサルタントは、公共機関が主な顧客であることから、市場規模は、公共建設投資規模に、比例してきます。
建設投資規模は90年代から半減しており、建設コンサルタントの市場規模も同様の経緯をたどっています。
ただし、市場の縮小に対して業者数の減少はあまり進んでいません。供給過剰状態にあります。
大抵、市場の縮小に対して、需給調整はやや遅れて追随することから、今後、業者の淘汰が進むでしょう。
市場は将来的には拡大はないでしょうが、いつまでも縮小するわけでなく、いずれ落ちつきます。業者が淘汰されて需給が安定すれば、また適正利益が確保できる時代が来ます。
よって、経営において注意すべき点は、縮小市場においては、「存続、生き残り」を重視した経営が必要になることです。
存続のためには、経営のリスク管理が重要になります。
※企業がじり貧になるほど、「拡大戦略や新事業開発」など一発逆転への誘惑が高まります。
③独立性の高い市場(設計施工分離の原則から業界は分離)
建設コンサルタント業界というのは、かなり独立性が高い業界です。
設計施工分離の原則から、建設会社(施工会社)と建設コンサルタント(計画・設計会社)は完全に分離された形で発展してきました。
欧米の多くの国でも、設計・施工分離が原則ですが、同一のプロジェクトにおいて、設計者が施工受注に参加できない仕組みになっています。
しかし、あるプロジェクトでは設計者、別のプロジェクトでは施工会社という形でオールラウンドに活動しています。業界は分離していません。
※そもそも日本で言う「ゼネコン」「建設コンサルタント」という概念がありません。
また、海外受注においてもほとんどが、日本のODAの調査・設計・施工監理なので、建設コンサルタントの市場は、ほとんどが国内由来、ドメスティックなものと言えるでしょう。
以上より、建設コンサルタントは他産業の影響を受けにくく、独自性が強いといえます。
反面、他産業に比べて、科学的な経営管理の仕組みというのは、遅れていると思われます。
見方によっては、まだ経営を大幅に改善する余地が残っているとも言えます。