これまで、たくさんのキャリア相談や助言をしてきましたが、助言時は、皆さん目を輝かせて聞いてくれます。その場ではやる気満々です。
しかし、結局、数か月もしないで挫折してしまう人が大部分です。
 そして、将来、やらなかったことを後悔すると分かっているのに、挫折してしまう最大の理由は、キャリア開発の効果を実感できないためだと思います。

(こちらの記事も参考にどうぞ。「キャリア目標を持つことの重要性」

特に、若手の時代は同僚もOJTだけでも成長しており、また、誰かの下で業務をやっている状況は、同僚との「本当の実力差」は表面上は見えません。そのため、若手ほど効果が実感できません
 
そして、もっともらしい理由を作って、挫折してしまいます。
 「仕事が忙しいから」、「どうせ無理」、「そんなことしても意味ない」と吹き込む周囲の同調圧力、その他、「やらない理由」「できない理由」というのは、いくらでも作れますし、キャリア放棄の誘惑はとても大きいことがわかるでしょう。
 
 しかし、周りに流されず、自分で考えてキャリア開発している人とは、目に見えない大きな差がついています。

キャリア開発というのは、日々の積み重ねです。
業務経験、自己学習、資格取得など、効率よく能力開発を続けていてもすぐに効果は表れません。
しかし、キャリア開発効果は、複利で効いてくるものなのです。つまり後になるほど効果の増え方が大きくなります。

例えば、キャリア開発を続けている人が、毎日ほんの0.03%だけ成長するとします。ごくわずかです。数か月では効果ほぼゼロです。
しかし元の価値が100点とすると、毎日、100点×1.0003×1.0003・・・と増えていきます。

頑張って1年続けても、111.5点です。周囲より11%程度伸びたところで、全く効果は実感できないでしょう。
5年続けると172.9点となります。かなり差がついています
それでも、周囲の評価は、「あいつは意外に優秀だな」くらいです。
 ところが10年後には、298.9点、もう3倍の差です。こうなると、技術士も取得し、自他とも認めるエース級でしょう。
 さらに、20年後には、893.2点となります。周囲とは約9倍の差になります。もう完全に別次元の領域です。新卒から継続できたとしたら、まだ40代前半、若手です。
 気力体力十分な、40代前半で普通の9倍のパフォーマンスを持っていれば、ここからまだまだいろいろ勝負できて面白い人生を歩めるでしょう。
 挑戦を続けられれば、その後もさらにどんどん成長していきます。

 なぜキャリア開発の効果が複利で増えていくかというと、
まず、勉強で「知識」が増えます。知っているか知らないかだけで大きな差がつく事象は、かなりあります。

 さらに勉強で多くの知識(情報)に接する中で「情報を読み取り分析する能力」が増えてきます。同じものを見て聞いていても、プロは他の人とは違って多くの情報を得ることができます。つまり見えないものが見えるようになります。一を聞いて十を知るというやつです。
以前、「地質の本当のプロ」と呼ばれるベテランと一緒に調査に行くと、現地で山をちょっと見ただけで、太古からの成り立ちから、地質の特徴、数百年前の地滑りの跡、これから滑るところ、道路を設計する場合の留意点など、一瞬で判別していきます。それは凄いものです。
 地形図を見ただけで、どの地域か分かるくらいです。
 これは、どの分野においても本当のプロというのは同じです。

 さらに、「問題を解決する能力」が増大します。業務経験と自己学習を合わせてキャリア開発をしているので、当然過去の、成功、失敗事例を網羅し、あるいは情報を統合し、取捨選択する等の能力、つまりマネジメント能力が向上してきます。
 大きなトラブルや大失敗は決して犯さず、制約条件を理解し、効率的、効果的なやり方を選択することができるようになってきます。

 キャリア開発をしているとこれらが複合的に作用して、やるほど能力が複利的な上がっていきます。 
 そうすると、実際に具体的な成果が上がります。能力を証明する資格も取れていくでしょう。要するに名実ともに評価が上がります。これが5年目~10年目の状況と言えます。

 すると、さらに、より難しい仕事、大きな仕事、あるいは出世や転職など、さまざまな「良い機会」が回ってくるようになります。
 40過ぎになれば、普通ではあり得ない位の良い機会も巡ってきます。

以上の説明を、式で表すと以下のようになります。

 キャリア開発の効果 =
「知識の量」×「情報収取能力」×「問題解決マネジメント能力」×「よい機会が増える」

これが、キャリア開発の効果が複利で増えるからくりです。

 このコラムを読んで、目を輝かせている人も多いでしょう。しかし、このような話をしても、あれこれ理由をつけて半年も継続できない人が大多数なのが現実です。

(こちらの記事も参考にどうぞ。「やらない理由を探す人々の研究
 
 これは、ある意味、チャンスだと思ってください。
「継続できない人が大多数」ということは、能力に自信がなくても、正しいキャリア開発を10年、20年と続けていけば、必ず、成功できるということなのです。

 だから、短期的な成果を求めず、一番よいやり方で、コツコツと継続してキャリア開発を続けてください。
 そして面白い人生を歩んでください。

こちらの記事もどうぞ「キャリア開発とは価値を生み出す能力を身につけること