前項までに、大きな流れとして、維持更新需要の増大、地方分権の流れを挙げましたが、今後も、社会資本投資は底堅いものがあるとしても、建設コンサルタント業務の分野については、衰退する分野もあるでしょう。
今後の建設コンサルタントにおいて儲かるビジネスは、何でしょうか?
と聞かれて具体的に答えは出せません。仮に、本当に儲かるビジネスを知っていたら誰にも教えないで自分でやります(笑)。
私自身では、意義のある面白いアイデアはいくつかありますが、別の機会に紹介するとして、ここでは、大きな流れから、未来の成長分野を探るためのヒントを押さえておくことにします。
基本的にビジネスというものすべては、顧客の需要(ニーズ)を充たすことに対して報酬をもらうことにより成り立ちます。
「①需要(ニーズ)を知ること」、「②ニーズを満たすこと」が重要になります。
「①需要(ニーズ)を知ること」から考えて見ましょう。
成長分野とは、今後、需要(ニーズ)が増大してくる分野のことです。
建設コンサルタントの顧客である公共機関ですが、公共機関は、国民の安全と経済活動を守り社会的利益を増進するために活動しています。
よって、顧客側で増大するニーズとは、今後の社会的問題に対応する内容であるはずです。
では、現在顕在化し、今後増大するであろう社会的問題や制約条件を、思いつくままに挙げて見ましょう。
社会的問題 | 「少子高齢化」、「人口減少」、「社会保障費増大」、「過疎化」、「一極集中」、「国際競争力の低下」、「不況」、「天災・災害」、「環境問題」、「エネルギー問題」、「ストックの老朽化」 |
大きな制約条件 | 「財政的制約」「膨大なストックの維持」 |
政治の潮流 | 「地方分権」や、「官から民へ」の流れ |
行政内部の抱える課題 | 「予算の不足」、「予算の獲得」、「高齢化(若手の不在)」、「団塊世代の大量退職」、「人手不足」、「技術者不足」、「資機材の不足」、「マネジメントノウハウ不足(特に地方移管による影響や半民事業)」 |
以上羅列的に挙げてみましたが、まだまだ沢山あるでしょう。
このような問題・課題に対応するために、建設コンサルタントが提供できるサービスが今後の成長分野になります。
思いつくままに書くと
「点検・補修技術」、「最適ストックの維持・更新(アセットマネジメント)」、「維持管理の効率化」、「運用面の高度化」、「IT化」、「長寿命化」、「省エネ環境」、「高齢者対応」、「地域振興・まちづくり」、「利便性の向上」、「マネジメント関連」、「人材育成・人材提供」 |
このようなものから、自社の強みや独自の技術を生かして、提供できるサービスを見つけて育てていくことが必要です。
しかし、誰もが思い浮かぶものや、参入が容易なものは、競争が激しくなります。
「②ニーズを満たすこと」について、他社との差別的な付加価値が重要になってきます。差別化による付加価値が大きいほど儲かります。
サービスの差別化というのは、かなりあいまいな表現ですが、「サプライチェーン全体で顧客の満足をどうやって最大化するのか」、ということです。
満足度は、サービスの過程と、結果としての成果の総和になります。
差別化のヒントとしては、効果面と効率面、時間(スピード)、ハードとソフト、官と民、これらの上手な組みわせとなります。
少なくとも、今までの建設コンサル業務の思考や枠組みで動いた場合は、大きな差別化、収益は期待できないでしょう。
建設コンサルタントの将来
- 1.建設コンサルタント業界の将来を見据えること
- 2.建設コンサルタントの将来市場規模はどうやって決まるのか
- 3.社会資本投資規模はどう決まるのか
- 4.将来の社会資本投資規模はどうなるか
- 5.社会資本投資の中身のどのように変化するのか
- 6.建設コンサルタント業務の発注主体の将来
- 7.今後の建設コンサルタントの成長分野は?